<No.6>基本機能の共通性

    機能をエネルギー変換で定義すると、技術領域の異なるテーマであっても、

    基本機能は同じであるケースに遭遇します。たとえば、口紅と建造物。

    この二つが同じ機能で評価できるなんて、想像できますか?

    実は、両方とも加重に対する変形量で、基本的な性能が評価できます。

    建造物は地震などの揺れに対する安定性を、口紅は使った時の発色性や色の

    均一性を評価することができます。詳細は学会誌などの発表事例を参照して

    頂くこととして、このような汎用性のある、技術領域を横断して活用できる

    共通機能を研究し、定義することが品質工学の重要な使命であると思います。

<No.5>エネルギーの入出力

    機能性評価ではシステムの機能をどのように定義するかがキーとなります。

    下手な定義をすると、時間やコストのロスだけでなく、肝心な評価の信頼性

    も無くなります。そこでTMでは、エネルギーの流れを入出力として考える

    ことを提案、推奨しています。人間が考えた技術やシステムは、エネルギー変換

    が基本ですし、エネルギーには加法性があります。投入されたエネルギーがシス

    テム内で分岐し、様々な状態に変化しても総量は変わらない。つまり、ロスを

    減らせば有効エネルギーは必ず増えるのです。機能性の定義では、エネルギー

    変換を真っ先に考えましょう。

<No.4>機能性評価とは

    TMでは、品質より機能性の評価を推奨しています。品質はお客の要求ですが、

    その要求を満たすために必要なシステムの働きを機能と呼びます。カメラを

    例に考えると、写真の綺麗さや、本体の軽さ、操作が簡単ことなどが品質で

    あり、機能としては、被写体の写真画像への変換、となります。被写体を入力、

    写真を出力と考えた、入出力関係で定義するのが一般的です。

    この入出力関係の正確さや長期間の安定性、適用範囲の広さなどが品質とも

    言えます。機能性の評価では、システムが置かれる様々な状況(誤差因子)を

    想定した、入出力関係の

    安定性を計測します。いかに多くの状況を想定できるかがポイントになります。

<No.3>直交表の役割

    直交表は、実験効率の向上や因子の主効果を公平に調べるために使われますが、

    TMでの使用目的はそれだけではありません。最も重要な点は交互作用の大きさ

    を調べることです。直交表に割り付けられた因子間に存在する交互作用の大きさ

   (総量)を調べ、後工程、特に市場での機能性を想定するのです。対象システムが

    大きな交互作用を持っている場合、市場では設計通りの機能性を発揮できない可

    能性が高く、交互作用が小さければ、期待通りどおりの機能性を市場でも発揮し

    てくれる、と言えます。交互作用の大きさを精度良く、しかも効率的に調べられ

    る道具として、直交表の役割は重要なのです。

<No.2>便利で有用な直交表の計画欠番法

    直交表から特定の列を抜き出したもので、少ない実験数で多くの2因子組合わせ

    テストができます。ソフトウエアバグの検査効率を上げることを目的として考案

    され、2009年品質工学研究発表大会で公表されました。考案者は松坂昌司氏。

   (松坂ティーエムコンサルツ代表)基本的にはL36直交表がベースですが、直交表の

    種類に関係なく欠番法ができます。また、ソフトウエアテスト以外にも、機能性

    評価やシステム選択に利用可能です。ただし、直交性が失われているため、

    要因効果図の信頼性は落ちることには留意が必要です。

<No.1> 特性値に分布を持つ場合のSN比の計算

    粉体における粒子径や樹脂の分子量、光や電気における周波数など、特性値に分布

    を持つ場合のSN比の計算では、分布から計算される標準偏差をバラツキ(誤差の影

    響)の要素として、分母(Vn)に加えることが田口玄一先生から提案されていま

    す。粒子径や分子量を安定的にコントロールする技術を構築する場合に有効なSN比

    ですので、ぜひ活用してください。